大学の物理や数学の諸分野を学習するにあたって、ベクトルとスカラー同時に扱うことが増えてきます。ベクトルとスカラーの概念と違いはこれから様々な学問を学ぶ上での前提知識となるので必ず覚えましょう。
ベクトル
まず、「向き」と「大きさ」を表すものをベクトルと呼びます。もっとわかりやすく言えば、「方向」を表すいくつかの値の組によって「大きさ」も同時に定義されるものがベクトルです。
例えば、\(\begin{bmatrix}2 \\3 \end{bmatrix}\)のような二つの値をもつベクトルであれば2次元座標で原点(0,0)から点(2,3)までの向きを表しており、座標平面上に矢印を書くと
このように向きを定めたと同時に大きさ(矢印の長さ)も決まることがわかりますね。
また、3次元においても同様、\(\begin{bmatrix}2 \\3 \\4 \end{bmatrix}\)であれば3次元空間上にこのような矢印を書くことができ
2次元の場合と同じように向きと同時に大きさ(矢印の長さ)が決まりますね。
さらに、4次元以降についても同様に定義することはできます。しかし、私たちは三次元空間上に存在するので、図示することはできません。
スカラー
一方で、「時間」や「質量」など単に数値の大きさを表すものをスカラーと言います。1次元のベクトルと似ていますが、一次元のベクトルは原点から一次元空間(x軸のみの空間など)までの向きと大きさを表すのに対して、スカラーは一次元空間上の一点(つまり一つの値)を表すだけなので意味は全く異なります。
スカラーと1次元のベクトルの違いをもっとイメージしやすく例えると、スカラーは一直線道路上の「コンビニ」など特定の場所を表すのに対して、一次元ベクトルは「後ろ」にある「コンビニ」というふうな向きの情報も教えてくれるものだと思ってください。
表記方法
説明したようにベクトルとスカラーというのは別物ゆえにしっかりと区別して表記しなければいけません。スカラーは一般的な文字\(a, b, c\)…で表記されるのに対して、高校で学んだベクトルは矢印を使って\(\vec{\mathstrut a}, \vec{\mathstrut b}, \vec{\mathstrut c}\)…というふうに書いていましたね。一方で大学の授業や多くの教科書ではボールド(太字)\(\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}, \boldsymbol{c}\)…で表記されます。この二つのベクトル表記は同じ意味です。
まとめ
- 向きと大きさを表すものがベクトル。
- 数値の大きさを表すものがスカラー。
参考文献
- 高木悟・長谷川研二・熊ノ郷直人・菊田伸・森澤貴之.2023.『理工系のための線形代数』.培風館